世界が未曾有の大混乱に陥った。新型コロナウイルスの感染者は630万人以上、死者38万人を超え、さらに第2波、3波の襲来が懸念されている。一途にグローバル化を進めてきた経済活動に急ブレーキが掛かり、サプライチェーンの在り方を含め、世界的な経済活動をどう再構築すればよいのか、厳しく問い掛けてきた。むろん、企業単独で、わが国だけで生き残ることはできないが、世界的な連携の危険と安全、成長と安定の調和をいま一度考え直す機会になり、コロナ後、どのような教訓を導き出すことができるだろうか。
医療情報サービスのデータホライゾン(西区)は、独自開発した医療データ分析力を生かし、パンデミックを未然に防ぐ感染症のモニタリングシステムの研究開発を始めた。同社は20年以上を費やし、開発を重ねた医療データベースとシステムで健康診査結果とレセプト(診療報酬明細書)データを分析し、全国に先駆けたジェネリック医薬品通知サービスや糖尿病などの重症化予防事業を展開。
さらに国民皆保険制度を維持するため、国民健康保険などの保険者向けに治療中の病名の特定と病名ごとの医療費算出、病期の判定などにより効果の出る保健事業「データヘルス」関連サービスへ踏みだした。関連企業と提携し、全国展開を加速する構えだ。現在、430以上の自治体向けに導入が進み、生活習慣の行動変容によって医療費抑制の成果が出始めているという。内海良夫社長は、
「コロナによる世界経済の損失は莫大。健康増進による医療費適正化の経済効果など吹き飛んでしまう。今後コロナに続くパンデミックがいつ発生するのか、どのようにして防ぐのか、いまこそ国を挙げて抜本的な対策を講じることが急務。国民皆保険が1961年にスタートした当時、高血圧や高血糖、脂質異常症など糖尿病に至る生活習慣病はほとんどなく、感染症対策が狙いだったという。有史以来、ペストやコレラ、スペイン風邪など人類の歴史は感染症との闘いだった。サーズやマーズが日本に上陸しなかったことから、パンデミック対策が立ち遅れていないだろうか。国策として重症化予防による医療費適正化はむろん、待ったなしだが、感染症対策を一歩間違うと国家がつぶれる事態になりかねないことが明らかになった今、新たな感染症の早期キャッチ、早めの対策が打てる態勢を敷くことが何より大事。匿名化したレセプトデータから感染症が疑われる医療情報を活用し、パンデミックを未然に防ぐことが可能な感染症のモニタリングシステム開発に着手している」
保険者、大学などの研究機関や厚生労働省、製薬会社、医師会などとタッグを組み、システム構築に挑む構え。
レセプトには傷病名や診療行為、服薬などのさまざまな医療情報が詰まっている。それぞれの目的に応じた整理・分析、メンテナンス体制を構築したことにより、レセプト情報を宝の山(ビッグデータ)に変貌させた。この医療ビッグデータを活用し、感染症の水際対策としてモニタリングという新たな領域でどのような成果を挙げることができるだろうか。危機だからこそ、知恵を絞り、技術革新のチャンスがあるという。